ノコギリ事件

先日、ある本を読んでいたら、ふと昔のある事件ともいえるお葬式の

出来事を思い出してしまいました。

正直、私自身もあまり思い出したくない事件であり、ブログに書くことも

憚れていましたが、あの事件から14年も経っていますから思いきって

書こうと思います。




私が修行時代のお葬式でまだまだ、お葬式を担当さえも出来る技術も

なかった駆け出しの頃のお話です。

舞台は名古屋市近郊の郊外のお葬式でした。

働き盛りのご主人の突然の死は遺された奥様と幼児の子供さん2人の

悲しみは本当に深く、亡くなられた瞬間から通夜・葬儀の最中も嗚咽が

止まらず、何とも重苦しい雰囲気のお葬式でした。

私は先輩のお手伝いという立場でお葬式に立ち会っていましたが、

ちょうど暑い夏の盛りで自宅でのお葬式。

噴き出す汗をこらえながら、悲しい悲しいお葬式を行っていました。

さて、お葬式の読経も終わり、柩の周りを囲んでの最期のお別れはこれまで

以上の号泣の中でのお別れとなりました。

お別れの間には当日担当してくれる霊柩車の運転手さんもご遺族の皆様に

お花などを配ってくれるのを手伝ってくれるのですが、

しばらく経つと私のもとへやって来て、怖い顔で小声で一言。

「このお棺、火葬場の炉に入らない・・・・」

一瞬、何を言っているのか瞬時にわかりませんでした。

このことを葬儀担当責任者に急いで伝えるとさすがに青い顔に・・・

とはいえ、ここまできたら火葬場に向けて出棺しなければならず、

定刻通り、出棺しました。

あとは、火葬場の職員さんの対応を祈るばかりでした。






しかしながら、そこは田舎の旧式の火葬場。そもそもお棺のサイズも

名古屋市内の火葬場ならばなんら問題のないサイズだったのですが、

入らないものは入らない。

頼みの火葬場の職員さんの対応はというと火葬炉の前で、悲しみの

どん底の中にいるご遺族に向かって、

「こんなに大きいお棺では火葬できない。

持って帰れ」


と怒鳴られ、必死に火葬を懇願するご遺族の想いを受け入れたかと

思うと何とご遺族の目の前で火葬炉からはみ出ている部分のお棺を

ノコギリで切り始めたのです。




お棺のサイズを間違えたのは確かに不慣れな私たちのミスですが、

まさかの火葬場の職員さんの対応は私たちも怒りがこみ上げてきました。

なんとも人の心が解らない人だったのです。





当然のことながら、お客様のお怒りは半端なものではありませんでした。

当時の幹部が何十回も謝罪に行っても許してくれるものではなく、

会社としても大問題に。

お葬式の打ち合わせをした営業担当者は重い懲戒処分でした。





私はこの事件を通して、

お棺のサイズを間違えた時の恐ろしさ

を身を持って知りました。

正直にいいますと、今でも火葬場との連絡不足から申告したサイズと違った

お棺が火葬場に行ってしまうとい手違いが全く起こらない訳ではありません。

しかしそのような時は火葬場の職員さんの臨機応変な対応で私たちのミスを

助けて頂いています。

本当にありがたいですね。




例え、事情があろうともご遺族の目の前でノコギリで切ってしまうという感覚は

今でも許せず、心のどこかに引っかかっている衝撃の事件だったのです。








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三浦 直樹

株式会社 FUNE (フューネ)代表取締役

1975年、愛知県豊田市生まれ。
2005年、株式会社FUNE (フューネ) の代表取締役に就任。
(株式会社ミウラ葬祭センターが社名変更)
2代目社長として経営回復、葬祭関連事業の 拡大を図る。
2024年、創業70周年を迎える。

代表就任以来「感動葬儀。」をテーマに掲げ、サービスの向上に努めた結果、2011年には週刊ダイヤモンド誌調査による「葬儀社350 社納得度ランキング (2月14日発売)」で全国第1位に。

一方、 葬祭業者のための専門学校「フューネ クリエイトアカデミー」を設立するなど、葬祭の在り方からサービスに至るまで、同業他社への発信を続ける。

終活のプロ、 経営コンサ ルタントとしても全国で講演多数。
著書に『感動葬儀。 心得箇条』(現代書林)、『間違いだらけの終活』(幻冬舎)、『2代目葬儀社社長が教える絶対に会社を潰さない事業承継のイロハ 代替わりは社長の終活』(現代書林)がある。

●好きな食べ物:和牛
●嫌いなもの:イクラ・泡盛


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