マーケットインとプロダクトアウト
マーケティング用語ですが、マーケットインとプロダクトアウトという用語はご存知でしょうか。
マーケットインとは、ニーズを優先し、お客様の声や視点を重視して商品の企画・開発を行い、提供していくことです。「顧客が望むものを作る」「売れるものだけを作り、提供する」という考え方です。
一方、プロダクトアウトとは、企業が商品開発や生産を行う上で、作り手の理論や計画を優先させる方法のことです。お客様のニーズよりも、「作り手がいいと思うものを作る」「作ったものを売る」という考え方です。
マーケットインとプロダクトアウトは対義語であり、二つの考え方は入口として全く違うのですが、企業として売上をあげていく為にはどちらの入口を選択して自社の商品やサービスを磨いていくことは絶対に必要なことなのです。
飲食店は5年後にお店が残っている確率は10%としか無いという厳しい数値が物語っているようにとても厳しい商売です。しかしながら、飲食店の営業許可は比較的簡単に取得できることもあり、新規の参入が絶えません。しかも脱サラして自分の夢を叶える為に飲食店を開業されるオーナーが多いのも特徴です。料理が好き・美味しいものを食べて頂きたいなどの動機により、参入しがちです。「作り手のいいと思うものを売る」ということに注力して参入してしまうのです。「プロダクトアウト」の考え方なのです。
結果的に飲食店を「プロダクトアウト」を入口にして開業してしまうと失敗をしてしまう確率がグッと上がってしまうのです。なぜならばお客様が求めているものでは無いからです。大手の飲食チェーン店は基本は「マーケットイン」の考え方でお店を出店しています。
もっとも「マーケットイン」がすべて良いという訳ではありません。商品やサービスが平準化してしまい「こだわり」が無くなり、同質化が進みます。こだわりは「プロダクトアウト」の考え方でしか生まれないのです。
結局のところ、飲食店で成功しているケースは基本路線は「マーケットイン」であるが、一部の商品に「名物」と呼ばれるこだわりの詰まったものを持っている「プロダクトアウト」の要素が入っていて適度なバランスがとれているところなのです。
さて、マーケットインとプロダクトアウトの方向性が事業承継において変化することはよくあることです。
先代の頃は「良いものを作れば売れる」という時代が続きました。結果、良いものを提供していれば自然とお客様がついてくるという考え方です。昭和時代の高度成長期やバブル期を体験した先代ならば、その考え方が強いのは当然です。
しかしながら、現代は基本的にお客様が求めているものしか売れません。だからこそ、マーケティングリサーチが最重要であり、お客様のニーズを掴むことは大切です。
事業承継は良くも悪くも先代からのヒト・モノ・カネを受け継ぐものです。もちろん、考え方もです。
後継者は良いものはさらに良くし、悪いものは改善し修正する必要があるのです。特に「マーケットインとプロダクトアウト」といいう企業の根幹な考え方が時代にあっているのかをチェックすることは後継者として一番注力して改善していかなければならない重要なことなのです。