クレームを恐れる人
事業承継の中で極端にクレームを出さない人がいます。一見するとクレームを出さない人は「優秀」に見えますが、本質的には私は優秀とは言い難いと思うのです。
私が新人であった頃、修行先として大手の冠婚葬祭互助会に入社し、新人であった私は直属の上司である主任が私の教育係であり、毎日の業務を行っていました。その上司の指導は必ずと言っていいほど、最後に
「こうしたらクレームにならないから」
と教えてくれるのです。
最初は素直に従っていましたが、2か月も過ぎた時になんとなく違和感を感じるようになりました。私が感じた違和感は一言で言ってしまえば「お客様目線でない」ということ。
当時は一言で違和感の原因をまとめる力は私にはありませんでしたが、今なら一言で違和感を表現できるのです。
つまり、当時の上司は仕事を無難にこなすことを第一としていました。
上司から叱責や人事査定の減点を結果的に恐れていたのでしょう。上司の行動は何かと自身の保身のために保険をかけているということを感じました。結果的にこの上司は役職者としては主任止まりで退職をされました。
前述の上司はサラリーマンとして生きていくにはそれでよいのかもしれませんが、経営者としては絶対にダメなのです。なぜならば、お客様から支持をされないと事業は成り立たないからです。
クレームを出さない商品やサービスならば、「無難」であれば良いのです。
しかしながら、お客様から支持をされる商品やサービスを提供するにはお客様を感動させなければならないのです。
お客様を感動させるには時としてマニュアルやルールを破ることも必要ですし、社内的には上司と戦ってお客様の為に決裁を取ってこなければなりせん。
ディズニーランドではお客様に楽しんで頂ける為にとても膨大なマニュアルがありますが、お客様を第一に考えた時にマニュアルを破っても、お客様第一ならば、表彰される仕組みもあるのです。
お客様が感動する商品やサービスは絶対にお客様第一主義なのです。
そして、お客様を感動させるには自己の挑戦が絶対に必要なのです。
結果的にお客様の意向とミスマッチならば、クレームに繋がります。
お客様を感動させる過程の中ではクレーム発生のリスクは自ずと増えます。
なぜならば、感動させるにはお客様にこちらの手の内は隠すべきであり、時をして必要な情報すら、お客様に知らせるべきではないのです。
そして絶対に仕事を無難にこなさないこと。自身の保身の為に保険をかけないことに尽きるのです。
後継者も人の評価を気にして自身を良く見てもらいたい、失敗をしたくない、と知らず知らずに保険をかけてしまうケースが往々になります。
経営者としての実力が無いからこそ出てしまう保身ですが、後継者としてお客様を感動させるレベルの事業を運営できる実力がつかなければ事業の継承はするべきではありません。