社長1年目の苦悩 その3
前々回、前回に引き続き、社長一年目の苦悩について書いていきます。
社長になったばかりの一年目というのは「方針」という点では大変苦戦を
しました。私は社長に就任するとともに着手した組織の改編はこれまでの
会社のルールも変更になった部分も多く、また先代の頃は○であった事柄
が新社長になったら×になってしまうという事柄も発生したのです。
おそらくこのことを日本語で「改革」というのでしょうが、改革には痛みは
やはり伴うものです。結果的に会社の方針についていけない社員が
うまれるのはある程度仕方のないことでしょう。
弊社にとって会社組織になって実質初めての政権交代は社員にとっても
これまでに経験したことのないことの連続になりました。
「変化」に対応出来ない社員の言い訳として
「社長の方針に従えばいいのですか。会長の方針に従えばいいのですか」
という言葉をしばしば浴びせられました。
当然のことながら、社長が変わったのですから、社長に方針に従うのが
筋道であると思うのですが、何も実績のない社長の言うことより、
30年以上の長きに渡り、一代で会社を発展させたカリスマである会長の
言うことのほうが、一言一言の重みも違うことは当然です。
本来は親子であるし、社長と会長の言っていることが一致するのは当然
といった感覚は社員にはあるのでしょうが、親子と言えども考え方が
180度違うことは多々あるものです。言い換えれば目的は同じでも手段は
違うのです。例えば富士山を登るという目的は同じでも静岡県側から登る
のと山梨県側から登るのでは景色も時間も装備さえも違うはずなのです。
私は事業承継においてこのことが一番難しい問題だとおもっています。
「会社を良くしたい」「売上を上げたい」という想いは同じでもその想いを
実現する手段が全く違うことは仕方のないことですが、これが
「方針の違い」ということになるのです。
結果的に先代のやり方が良かったとか、新社長のやり方のほうが良い
などと社員が議論すれば、結果的に仲間割れになり、最悪の場合は
社長派・会長派という派閥さえ出来てしまうものです。
会長は未熟な新社長を心配して口を出す。しかし、それがあだとなり、
組織内が混乱する。事業承継での典型的な失敗例になってしまいます。
社長を退いた会長は口を出さない。その代り、新社長は誰もが迷わない
方針を明確にしなければ、この局面は乗り越えられません。
私が、たった一言で会社の進むべき方針を悩んで悩んで考えた末に
生まれた究極の旗印が「感動葬儀。」だったのです。