辞めることが出来ない苦しみ
継承する側にとって、事業継承が難しいと感じるのは「辞める」ことだからです。
事業に限らず、「止める」ことは「始める」ことの10倍難しいものです。
一番解りやすい事例と挙げるとすれば、夫婦を止めること、すなわち
「離婚」を経験された方なら、実感として「止める」難しさを感じて頂けるのでは
ないかと思います。
後継者は先代から事業を継承された瞬間から、「辞めることができない苦しみ」
との闘いが始まります。
どんなに体調不良でも、やる気が無くなっても、現実から逃げたいと思うことが
起こっても「辞める」という行為が成就できるのは次期後継者を選定して事業継承
を行うか、自らの意思で会社を閉鎖するか、あるいは譲渡ができた時のみです。
後継者が事業を引き継ぐということは「どんなことがあっても辞めない」という
強い覚悟が必要なのです。
しかしながら、この覚悟を充分に理解せずに先代から事業を継承された場合の
現実はやはり「辛い」という気持ちが心を支配してしまうことがあるのです。
今更ですが、事業を継続することは多くの「責任」を担っています。
時として自分の持っているキャパ以上の責任が押し寄せてくることもあるのです。
その時に、逃げずに立ち向かっていく心を形成しなければ、経営は必ず
不安定になってしまうのです。
会社に所属する多くの従業員は安定を求めます。
毎月、大きな業務上のトラブルや給与の未払いなどがおきれば、働くことから
逃げ出したくなるのは当然の結果です。
逆に言えば、会社が安定をしているのは社長の「辞めることが出来ない苦しみ」
闘っている証拠なのです。