事業承継は社長の終活
私の本業は葬儀の仕事であり、これまで20年以上の長き渡って様々な「死」を
見てきました。後悔のない人生を送る為にということでの活動を「終活」という
ようになって早10年近い歳月が立つのですが、今ではすっかり「終活」という
言葉は日本において完全に市民権を得ており、言葉の認知度もしかりですが、
終活の中身を多くの人が理解をしています。
事業承継を体験した私が事業承継のお手伝いをしていると本業である「葬儀」
の仕事と事業承継においてある共通点があることに気づきました。
葬儀においては家族内での親から子への絆のバトン渡しなのですが、
事業承継は企業内での先代社長から新社長への絆のバトン渡しなのです。
元来、葬儀の役割の一つとして「襲名披露」という要素が含まれており、
喪主を務める方の葬儀での立ち位置は故人の名代であり、喪主を務めるという
ことは対外的に代替わりを宣言するものなのです。
実は私自身が2005年に父から社長交代にて事業を承継した時は
お取引様・地元の政財界の皆様を400人ほど招いて「社長就任式」を開いて
頂きました。私にとっては多くの皆様へのお披露目興行でしたが、
長年、社長の職を辞す父にとっては「生前葬」でした。これは父が自分自身で
口にしていた言葉で、確かに本質的には「生前葬」そのものでした。
事業承継を円滑に実施する為に想定する様々な政策や調整の類は
まさに終活といわれている「自分の死後(引退)の後に残された人々を
いかにして守っていくのかという点において目的や方向性は全く同じです。
企業は法の下では一人の人格者(法人)です。
人格があるということはやはり、一人の人間と同じように、尊厳を損なうことなく
終わりを尊重しなければなりません。