廃業
事業を継承出来なかった時に選択することの一つとして「廃業」という
選択肢があります。日本では約8割近くが中小企業と言われている中、
後継者のなり手不足からくる廃業は少なからずあるのです。
単純に廃業は倒産や破綻とは違います。
倒産や破綻は大きなな負債を抱え、個人的にも時として破産という
選択をしなければならないことがあるのですが、「廃業」というのは
財産と負債を帳簿上ゼロにすることです。
つまり、企業に借金があれば、資産を売却して、時として個人資産を
注入してでもゼロにしなければ「廃業」はできません。
廃業が出来るということは基本的にこれまでに築いてきたプラスの
財産が多くなければ、達成は難しいものです。
多くの企業はマイナスの借金が多くて廃業することが出来ず、
「やめたくてもやめられない」状態なのです。
やめることができないので、企業を存続する為に事業を次世代に継承する
という事業継承は実質的に多いのです。
説明するまでもありませんが、このような事業継承は「不幸」を招く要素が
満載なのです。事業継承することで倒産や破産をすることを先送りして
いるにすぎず、もっと言えば自分の代の責任を次世代に押し付けている
のような状態です。
それでも会社を守る為、従業員とその家族の生活を守る為に事業を継承
するという選択をする後継者はたくさん存在するのです。
そして、見事に先代よりも企業を発展させてしまう後継者もいらっしゃいますが、
残念ながら事業がさらに悪化し、倒産や破産の憂き目に遭う後継者もいるのです。
確率的には成功する人のほうが圧倒的に少ないのが現実であり、このような
確率を目の前に考えれば、無理に事業継承をするならば、廃業できる時に
廃業をすることも、広い意味では立派な事業継承策なのです。
葬儀社の社長である私が葬儀の現場でよく目の当たりするのは、
当代の突然の急逝により、急遽事業を受け継いだ為に準備不足の
為に会社が倒産まで追い詰められたお客様たちの実情です。
急逝時に廃業という選択をすることができたのに、その選択をせず、
結果的に不幸になってしまう人々を見ていると、本当に事業承継は
難しいものだと思うのです。
そして、「廃業」を選択することができるタイミングというものは
極めて幸運の瞬間であるのですが、当事者はその幸運に気づかずに
通り過ぎてしまうものなのです。