寺院の事業承継
葬儀社の社長である私は職業柄各種の宗教家との交流があり、その中でも
圧倒的に多いのは仏教の住職です。
仏教の宗教施設である寺院は全国に77206寺あり、この数は2020年時点
でのコンビニエンスストアの数は5万5924軒であることと比較をしても
コンビニよりお寺が多いことは衝撃的な数字です。
ご承知のようにコンビニエンスストアの市場は既に飽和状態であり、経済的に
厳しい状態であれば、淘汰をされていきます。それが市場の原理であり、世の中
の基本的な流れです。
ところが、寺院の数は簡単に減っていきません。
実際のところ、寺院経営は一部の寺院を除くと相当厳しいのが現実です。
江戸時代から続く檀家制度の形骸化や葬儀の小規模化などで寺院の収入である
お布施などが激減しているのです。
結果的に寺院の経営がままならず、住職が副業として他の仕事をしている方は
かなりの人数となります。
経済的に厳しいのなら、同じ宗派の寺院と合併すればよいではないかと
思いますが、これが祭礼の時の露店・屋台の既得権益や墓地の永代使用
などの契約が存在して簡単ではないことのほうが多いのです。
だから寺院の収入が少なくなっても寺院数が少なくなってはいかないのです。
収入が少なくなれば、その仕事に従事する人員を減らすリストラは世の常
なのですが現実は寺院の数だけ、住職が必要です。
その為に複数の寺院を兼務する兼務住職が日本中でたくさんいらっしゃいます。
寺院を未来に向けて守っていく為の事業承継は単に親から子というだけでなく、
各宗派の本山からの派遣住職という方法も多々あり得ます。
寺院は統廃合という選択がなかなかできずに存続ありきですので、これからは
事業承継がますます難しくなります。
これまでに何度も事業承継において必要なこととして指摘しているのは
継承者の特典や旨みを明確にすることです。
事業を継承すれば得られる利益に魅力がなければ継承する覚悟を示す人は
減少の一途です。
日本中にある寺院は大抵のところは江戸時代以前から続いています。
少なくとも150年以上続いている歴史を守っていくことの大切さと経済的な
現実の間で悩んでいる住職が日本中に溢れているのです。